閉じたまぶたの向こうが、何だか明るい。おかしいと思ってゆっくりと目を開けてみると、開け放ったままだったカーテンの先には、青くなりかけた空が広がっている。
 おそるおそる枕元の時計を見てみると、短針は9のところでじっとしていた。
    これは完全に、寝坊である。

「やってしまった・・・!」

 実を言うと、今日は予定があったのだ。家族の誰かに起こしてもらおうと思っていたのに、昨日それを伝えるのをすっかり忘れていた。しかも運悪く、今日はみんな予定があったみたいで、すでに家の中は空っぽ。本当についていない。

「どうしよう、絶対怒ってるよね・・・」

 寝ぐせだらけの頭を抱えながら、私はベッドの上に正座した。こうなってしまったのはもう仕方がないんだから、次に何をしたらいいか考えよう。そうは思うのだが、動転した頭は正座したくらいじゃ落ち着いてくれなかった。どうしようどうしよう。

「そうだ、とりあえず・・・携帯!」
 机の上に置きっ放しになっていた携帯に手を伸ばす。もしかしたら何か連絡が来ているかもしれない。
 薄目で待ち受け画面を見てみる。だが、特に着信履歴は無い。メールも来ていないようだ。
 なんだ、そんなに重要な用事でもなかったのかな?と首を傾げながら、私は携帯を閉じた。まあ、それならそれでいいや。せっかくの休みの日なんだし、ゆっくり休もう。
 今から何をしようか。もちろん、二度寝である。




 もう寝れない!というところまでごろごろしながら粘ってみたが、もうさすがにそれにも飽きた。もう一度寝返りをうって時計を見てみると、もうお昼だった。

「お昼ごはん、どうしようかな」

 私服に着替えながら考える。自分のためだけにご飯作るのって、あんまりやる気でないんだよなあ。だからといって一人でどこかに食べに行くのも寂しい。

「誰か誘ってみようかな」

 携帯のアドレス帳を見てみる。めぼしい人はいたけど、当日に突然誘う勇気がなかった。私のいくじなし!
 カップラーメンでも探してみようと、私はリビングへ向かった。





 洗濯物をたたみ終えて、私はうーんと伸びをした。たまにはこういう、主婦みたいな過ごし方もいいのかも。そう思いながら時計を見てみると、もう15時を過ぎていた。

「あー、アイス食べたい気分かも」

 3時のおやつとはよく言ったものだ、と思った。確かにこの微妙な時間帯って、本能的に甘いものが欲しくなる気がする。
 今日の気分は、クリーム系よりシャーベットだなあ、と思いつつ冷凍庫を開けてみると、そこにはバニラとかチョコとか、完全にクリーム系のカップアイスたちが収まっていた。

「うーん、いつもだったら嬉しいメンバーだけど・・・今日はなあー」

 冷凍庫を閉めて、少し考える。シャーベットが食べたいのは本音だけど、この炎天下の中、コンビニまで行くのもちょっと面倒だ。どうしようかな。
 あごに手をあててしばらく悩んだ後、私はもう一度冷凍庫を開けて、バニラアイスを手に取った。食べてるうちにバニラの気分になるって、きっと。
    実際、一口食べたところで、やっぱりバニラにしてよかったなんて思ってしまった。このメーカーのバニラは絶品だよ、ホント。
 幸せな気持ちでテレビをつけると、ドラマの再放送がやっていた。見たことがないドラマな上に、今回のが第5話らしい。なんかさっぱり話がつかめないなあ。それでもそのうち面白くなるだろうと、私はそのドラマを見続けていた。





「結局今日は、何もしなかったなあ」

 ベッドの上でうとうとしながら、私はぽつりと呟いた。後悔しているわけではないけど、ちょっとつまんなかったかなあとも思うのだ。
 とりあえず今日、寝坊さえしなければ、過ごし方はガラッと変わったに違いない。いや、それだけじゃない。きっと他にも、一日を変えられるきっかけがあったはずだ。

「まあ、久々にゆっくりできてよかったのかな。もう寝ちゃおうっと」

 私はよいしょと寝返りを打つと、そのまま目を閉じた。








RICOPRA


--- ノーマルEND



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