私はよいしょと立ち上がると、部屋まで財布を取りにいった。



   あー、迷う」

 小声でそう呟くと、私はもう一度、綺麗に並んでいるアイスを隅から隅まで見た。シャーベットを買うためにやってきたはずなんだけど、コンビニのアイスは種類が様々すぎて目移りしてしまう。大体シャーベットの種類が多すぎるし、練乳いちごのかき氷だって捨てがたい。
 じっと見ているから迷っちゃうのかも。店内をぐるっと回る間に決めよう、と、私はアイスのコーナーを離れた。そういえば今日は、いつも買ってるファッション雑誌の発売日じゃなかったかな。

「コンビニ来てよかったー」

 うきうきしながら雑誌のコーナーに向かう。だがあと数歩というところで、私の足は止まった。

「・・・あれ?」

 確かに今日は土曜日だ。だから雑誌のところに人がたくさんいてもおかしくない(今度の月曜は祝日なのだ)。でもそこには不似合いの人が、一人だけ混じっている。長身にスーツをまとって、足元は何故か下駄。そしてサングラスに天パの男。・・・この人はどう考えたって。

「坂本先生?」

 後ろから遠慮がちに声をかけると、その人はゆっくりと振り返った。

「おーじゃ。何してるぜよ」
「それはこっちのセリフですよ」

 とりあえず人だらけのそのエリアから先生を引っ張り出すと、私は呆れて言った。こんな学校から近いコンビニで、よく堂々とジャンプ争奪戦に加われるよね。

「わしはジャンプ買いにきたんじゃ、金ぱ」
「あ、分かったんでそれ以上言わないで下さい」
「え、何で」
「いろいろまずいらしいです。銀八先生いわく」

 よく分からんのー、なんて言って先生は笑った。先生が間違わなければいいだけの話なのにと思いつつも、また先生の笑顔が見れたって嬉しくなる。なんかあったかい気持ちになるんだよね、先生が笑うと。

「そんで、は何しにきたんじゃ?」
「あ、私はアイスを買いに」
「そりゃ名案ぜよ。わしも混ざっていいか?」
「え?別にいいですけど」

 混ざるってなんだと思いながら、私は言った。その返答に満足したのか、先生は笑顔でアイスのコーナーに向かった。

は何にする?」
「私はこれに」
「じゃあわしもコレ」

 シャーベットのバーを二つ取ると、先生はそのままレジへと向かった。

「え、私払います!」
「気にすることないきに」
で、でも、先生が生徒になんてダメですよ!

 そう言って慌てて代金を渡すと、先生は困ったように笑った。ちょっと強引だったかと後悔したが、先生はすぐにいつもの調子に戻った。

「大丈夫ぜよ、担任ってわけじゃないし」
「そういう問題じゃ・・・あれ?」

 担任という言葉が何故か引っかかった。銀八先生関連で、さっき何か話をした気が・・・。

「あ!先生、ジャンプ忘れてます!」
「あー、そういえば。アッハッハ」
「笑ってる場合じゃないです!」

 私は先生の背中を押した。先生は背が高いから、私は全く前が見えない。

「先生、自分で歩いてくださいよ!」
「えー?」
「えーじゃなくて!」

 全然言うことを聞いてくれない先生を押しながら私は、変なタイムロスもしちゃったし、アイスは帰り道に食べなきゃ溶けちゃうかな、なんて考えていた。








RICOPRA


--- 坂本ノーマルEND



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