「・・・やばいなあ」 着信の数に対して、そう呟いたわけではない。問題は、待ち合わせ時間を過ぎてすぐの3回の着信の後、1回も電話がかかってきていないということなのだ。これはつまり 「またやっちゃったよ・・・」 獄寺、怒るとすっごい怖いんだよなあ・・・。特に、沢田関連で。 私は深くため息をついた。残念ながら、今日は沢田関連の買い物に付き合わされる予定だったのだ。 「・・・とりあえず、行ってみよう」 待ってるはずないけど、万が一待ってたりしたら大変だし。 私は慌てて準備を済ますと、家を飛び出した。 「・・・うそ、獄寺?」 1時間も遅刻したのに、獄寺は待ち合わせ場所にいた。今日は機嫌がよかったとかで、待っててくれたんだろうか。だとしたら今日の私は本当についてる。そう思いながら、私はそろりそろりと獄寺のところに向かった。 「ご、獄寺・・・」 そっと声をかけると、獄寺は慌てて顔をあげた。そして私の顔を見ると、一気に彼の眉間にシワが寄った。 「テメェ・・・どういうつもりだ」 「あ、あの、ほんとごめん・・・寝坊しました」 「・・・寝坊?」 獄寺の眉間からシワが消えた。びっくりしたからだとは思うけど、でもほっとしたときの顔っていうか、なんかそんな感じにも見えたのは気のせいだろうか。 でも残念ながら、獄寺はまたすぐ元の顔に戻ってしまった。 「だったら連絡くらいしやがれ。無駄に待ったじゃねえか」 そう言われて私は、自分が連絡さえしていないということに気づいた。 「と、とにかく早く行った方がいいかと思って・・・」 獄寺が怖くて連絡出来なかった、なんて絶対に言えないと思った私は、とりあえずこう言った。別に嘘をついたわけじゃないぞ、と思いながらうつむいていると、獄寺が呆れたように言った。 「早くも何も、連絡なかったら普通は帰ってんだろ」 「それはそうなんだけど・・・あれ、そういえば獄寺はどうして待ってたの?」 沢田関連じゃない用事なら率先して帰ってしまう獄寺が、1時間も待ってるなんて意外でしかない。もしかして実は私と出掛けたかったから・・・?なんて期待を込めて聞いてみたのだが、獄寺の表情は更に険悪な感じになっていくだけだった。 「俺よりもテメェのほうが、10代目のお好きなものに詳しいだろ」 「え?沢田?」 「差し入れ、すんだよ。テメェがいないと買いに行けねーから、待ってるしかねーだろ」 「あ、そうだったんだ・・・」 確かに私は沢田と仲がいい。でも今は獄寺だって同じくらい沢田と仲がいいんだから、自分で選べばいいのに。私はなんだかおかしくなってしまった。 「何笑ってんだよ」 「いや、だって」 「テメェ・・・爆破されてーか」 「そ、それはちょっと!ていうかきっと沢田なら、獄寺のくれたものならなんでも嬉しいって思うんじゃない?」 いや、実際には、そんなの悪いよ!って言って沢田が断って、最終的にリボーン君の手に渡るんだろうけど。でもそんなこと、獄寺には言えない。 「そ、そうか?」 「うん、そう思うよ。だから獄寺がいいって思うもの選びに行こう?」 「行こうって、テメェも来るのかよ」 「え、だめ?」 「いや、別に・・・そういうわけじゃねーけど」 言いながら、獄寺は歩き出してしまった。いつもの獄寺なら絶対来るなっていうのに、今日はどうしたんだろう。やっぱり心配なのかな、自分だけで選んだものだと。 怖い印象しかなかった獄寺だけど、案外可愛いやつなのかもしれない。そんなことを思いながら、私は獄寺の後を追った。 RICOPRA --- 獄寺ノーマルEND |