「なんか他に面白いのやってないのかなあ」

 私は近くにあったリモコンを取った。まあこの時間帯だからあまり期待はしていないけど。順番にチャンネルを変えていると、携帯が鳴った。私の幼馴染、悠一郎からの電話だ。

「なにー」
『ゲームしようぜ!ついでに宿題も!』

 うきうきした様子で悠一郎が言う。絶対にゲームのことしか考えていない口ぶりだ。ゲームだけだと私がうんって言わないだろうと思って、仕方なく付け足したんだろう。頭がいいのか悪いのか、長い付き合いだけどいまだによく分からない。

「今からー?」
『今からー!俺んちで!』
「えー、めんどくさいなあ」
んち隣じゃん!それに宿題分かんないとこだらけだし、教えてもらわないとシガポに怒られる!』

 ・・・どうやら、宿題も大ピンチなようだ。
 私はテレビを消すと、部屋に向かった。シガポってことは、数学の宿題だ。あー確かにあれ難しいし、悠一郎は一人だとキツイかも。

「分かった、今行くから」
『おう、待ってる!』



   なー、そろそろゲームしようぜ?」

 悠一郎は机に突っ伏すと、足をバタバタさせた。着いて早々「ゲームは宿題が終わってから」と言い切った私に根負けした悠一郎は、意外にもおとなしく宿題をこなしていたのだ。・・・さっきまでは。

「まだ半分も終わってないじゃん」
「だってさー」

 悠一郎はタコみたいな口でこっちを見てくる。まるで小学生だと、私は思った。そんなところが可愛らしい、と思うこともあるけれど、やっぱり高校生なんだからもっとかっこよくなってもいいんじゃないか、とも思うのだ。かっこいい幼馴染って、なんかいいじゃないか。

「じゃあさ、ちょっと休憩!息抜きのゲームならいいじゃんか!」

 悠一郎ががばっと起きあがった。目もさっきとはうってかわってきらきら輝いている。私はため息をついた。

だめ!一回やったら絶対もう宿題やんないでしょ!
「えー!ケチ!」
「そんなこと言ったらもう教えてあげないよ?」
「それは困るけど!」

 悠一郎はもう一度机に突っ伏した。その拍子に、彼のコップが倒れてしまう。たぶん腕が当たったんだろう。

「もー、何やってんの!」

 慌てて近くにあったふきんで麦茶を拭う。残りが少なかったから、ノートが濡れたりとかはしなかったみたいだ。全部拭きとると、私は台所に行ってふきんを洗った。後ろから、悠一郎の感心したような声が聞こえる。

「なんか意外だなー」
「なにが?」
が、いいおよめさんになりそうだから!」
「ええ!?」

 びっくりして振り向くと、悠一郎はニカッと笑った。

「でも、「ダメ!」ってすぐ言うから、モモカンみたいになりそー!」
「い、言わないよ!」
「さっきも言ってた!」
「言ったっけ・・・」

 私は悠一郎の隣に戻ると、首を傾げた。横で悠一郎がうんうんと頷いている。

「言った!ここにさ、阿部みたいにシワ寄せて!」

 言いながら、悠一郎が眉間にシワを寄せる。予想以上に似てたのと、予想以上に不細工だったので、私は吹き出してしまった。

「あははっ!」
「なんで笑うんだよ!の真似なのにー!」

 悠一郎は顔を戻すと、怒ったのか頬を膨らませた。悠一郎とは学校でもよく話すけど、ここまで子供っぽくない。私だけに見せてくれる姿なのかな、と思うと、なんだか嬉しくなってしまった。

「ごめん、ごめんって!ちょっとならゲームしていいから!」
「ホントに!?」

 やったー!なんて叫びながら、悠一郎はコントローラーを手に取った。それを見ながら私は、結局宿題は見せてあげるはめになるんだろうな、なんて、小さくため息をついた。








RICOPRA


--- 田島ノーマルEND



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