第壱話 追憶






 時刻ももう丑一つを回り、辺りは静寂に包まれている。
 空にはぽっかりと穴が開いたように月が輝き、眠っている木々を見守っている。
 高杉は煙管から紫煙を燻らせながら、その月を見上げていた。
自分がいる薄暗い部屋とは全く対照的なそれに、高杉は憎悪ともとれる嫌悪感を抱いていた。

「まるで昔の俺のようじゃねェか。あのお月さんは」

言って、自嘲気味に咄う。それに合わせるかのように、風が鳴る。
 高杉は、目を閉じた。
 脳裏にあの日の記憶が蘇る。



「あの日も、こんな月夜だった