「しょうがないなあ、ちょっとだけだよ」
「・・・え?いいの?」

 私が渋々そう言うと、悠一郎は目を丸くしていた。

「なにその顔」
「オッケーでると思ってなくてさ。ラッキー!」

 悠一郎はバタバタとテレビの前に移動すると、私を手招きした。

!はやく!」
「分かったって」

 ホント子供なんだから、と呆れたが、そうやって無邪気な態度で呼ばれるのがすごく嬉しかったりもするのだ。ああ、まだ私は悠一郎の幼馴染でいいんだって、安心する。野球がうまくて、かっこよくなっちゃった悠一郎が、私の前では、昔のままの悠一郎でいてくれるんだって。



「っしゃ、全勝ー!」
「く、くやしい・・・!」

 予想通りではあるけど、やっぱり負けるのは悔しい。私はさっきの悠一郎のように、足をバタバタさせた。

「ね、もう一回!」
「えー、もう他のやろーぜー?」
「だめ!勝ち逃げなんてずるいよ!」

 私がムキになって言うと、悠一郎は困ったように笑った。

「結局のがハマってるし」
「わ、悪い?」

 私が頬をぷうと膨らませると、悠一郎はおかしそうに、そして嬉しそうに笑った。

、変わんねーな!」
「ええ?なに言って・・・」

 悠一郎はそれには答えず、コントローラーを床に置いた。うーんとひとつ伸びをすると、そのまま寝転がってしまった。仕方ないから私もコントローラーを置く。悠一郎をこんな形で見下ろしたことってなかったから、なんだか新鮮だった。

「ほら、俺らってもう高校生だろ?」
「うん」
「でもさ、今まで通りゲームやってんの」
「うん」
「なんかさ、すごくね?」

 私も悠一郎の横に寝転がった。確かに、お互い変わっちゃったのかもと思ってたとこだったから、こうやってふたりでごろごろしてられるのは嬉しい。でも。

「すごくは、ないよー」
「なんで?」

 悠一郎が寝返りを打ったような音がした。さすがにそっちを向くのは恥ずかしいから、私は仰向けのまま言った。

「だってこれ、普通でしょ?これからも」

 それを聞くや否や、悠一郎はガバッと起きあがった。そしてその勢いのまま、こっちを見る。な、なんなの!私はびっくりしてしまって、そんな問いかけさえ出来なかった。

「ホントに!?」
「えっ、うん」

 まだちょっとびくびくしながら答えると、悠一郎は起きあがった時よりもさらに目を輝かせた。

「俺、聞いたかんな!ゲンミツに!」
「ど、どしたの悠一郎。突然テンションあがりすぎ・・・」
「そりゃあがるよ!」

 悠一郎はもう一度寝転がると、よっしゃー!なんて叫んでいる。私はわけが分からなくて、とりあえず悠一郎のほうを向いた。とにかく喜んでるってことは分かったんだけど、一体なにがそんなに嬉しかったんだろう。

「ねえ、何がそんなに嬉しかったの?」

 小声で尋ねると、悠一郎もこっちを向いた。小さい頃はこうやってよく向かい合ってお昼寝してたけど、今やるとやっぱだめだ、恥ずかしすぎる!
 私が慌てて向きを変えようとすると、悠一郎に手をつかまれた。同時に、どきん、と心臓が音を立てる。目の前には、真剣な悠一郎の顔。

が、ずっと一緒だって言ってくれたから、嬉しいんだって」

 言い終わるとすぐに、悠一郎はいつもの顔に戻った。そしてそのまま起きあがると、またコントローラーに手を伸ばしている。あんなこと言った直後に「よし、もう一戦!」なんて、切り替え早すぎるよ!

「・・・も、もうちょっと待って・・・!」

 どんな顔をして起きあがったらいいか分からなくて、私はしばらくごろごろするハメになってしまった。








RICOPRA


--- 田島HAPPYEND



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