「ご、ごめん!ホントごめん・・・」

 いくら焦ってたっていっても、獄寺はきっといないだろうと思ってたにしても、やっぱりちゃんと連絡はすべきだった。私がもし獄寺の立場なら、すっぽかされたって勘違いして、きっと嫌な気分になる。もっと言うと、心配にもなる。ネガティブな日なら、獄寺に嫌われたのかもって落ち込むかもしれない。獄寺はここまで考えなかったかもしれないけど、でもそういうことを、私はやっちゃったんだ。
 私はうつむいた。なんかもう、獄寺の顔見れないよ。

「・・・オイ、。調子狂うから顔上げろ」
「でも・・・」
「もう怒ってねえから。事故でも病気でもなく、ただの寝坊だったんだからもういいだろ」

 恐る恐る顔を上げると、目の前の獄寺は本当にもう怒っていないようだった。相変わらず眉間のシワは顕在だけど。

「心配、かけちゃった?」
「なっ、何で俺がテメェの心配なんかすんだよ!ありえねーだろ!」
「まあ、そうなんだけど」

 獄寺は、何故だか顔を真っ赤にしている。急に大きい声を出したからだろうか。でもなんとなく新鮮で、私は笑ってしまった。

「何笑ってんだよ」
「ううん、何でもない。それより買い物ってなに?沢田に何か買うの?」

 確かそんな用事で、私は呼び出されたはずだ。その買い物にどうして私が必要なのかはよくわからないのだが、でも連絡もないのに1時間も待ってたんだから、私もそれなりに重要なポジションにいるはずだろう。ワリカンとかするつもりなのかな。
 財布の中身を思い浮かべながら待っていると、獄寺はきまりが悪そうに口を開いた。

「ああ、その買い物は・・・もう終わった」
「え、終わったの?じゃあなんでここに?」

 別に居心地がいい場所でもない。獄寺がここにいる理由が、私にはまったく分からなかった。

「べ、別に・・・」
「ちょうど買い物が終わったとか?」
「そ、それだ!よく分かったな」

 明らかに嘘だと分かるトーンで、獄寺が言った。てことは買い物が済んだばっかりって感じでもない。・・・そうなると、理由は一つしかないんだけど。

「・・・私が来るかもしれないって、待っててくれたんだ?」
「ばっ・・・ちげーよ!何で俺がそんな・・・」

 顔を真っ赤にしながら、獄寺が言った。こんな顔、今まで見たことない。可愛いなあなんて思いながら、私は口を開いた。

「照れることないじゃん?私は嬉しいけどなあ」
「だっからちげーって!ふざけたこと言ってると爆破すんぞ!」
「そ、それは勘弁!」

 獄寺が本気でダイナマイトを取り出しそうになったから、私は慌てて謝った。もうちょっといじってやりたかったけど、このままじゃ本当に爆破されかねない。

「とにかくさ、せっかく待っててくれたんだし・・・カフェにでも行こう?おごるよ」
「テメェに借りなんか作ってたまるかよ」

 そんなことを言いながらも、獄寺は近くのカフェに向かって歩き出している。素直じゃないなあ、なんて思いながらも、自分が案外この状況を楽しんでいることに気付いて、私は笑ってしまった。








RICOPRA


--- 獄寺HAPPYEND



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