さっき読み終えた本の結末が気に食わなかった。期待していたのに驚くほど手抜きなフィナーレで、私は危うく「はぁ!?」と叫ぶところだった。楽しみにとっておいたおかずを誰かに横取りされた時の気分に似ている。いや、ちょっと違うかな。とにかく私は苛々したのだ。すぐに席を立ちたい衝動に駆られたが、授業中なのでそれも叶わなかった。早く終われ、5限!願ったところで残りの10分は駆け足をしてくれるわけではない。楽しいときは耳障りに感じるあのチャイムが、今は待ち遠しかった。と思っていたら隣からひそひそ声。って何をそんなに必死になっているの田島くん。顔を向ければ彼はこっちを指さしていた。見てみろよ、窓。言われるがままに首をぐりんと回す。どーせ田島のことだ、大きな虫でも見つけたに違いない。そう決めつけていたから、私は何もいないじゃんと答えてしまった。田島が変な顔をする。何言ってんだよ。そうじゃなくて、空!待ちきれないとばかりに田島が腕を振る。空?と首を傾げながらもう一度左を見る。と同時に私は固まってしまった。そりゃそうだ。窓の外は雲一つ無い快晴だったんだから。





「ついに梅雨明けかなあ」
「多分な!あーやっと外で練習できる!」
「そっか、野球部は梅雨時退屈だよね」
「そうでもないぞ?俺走るの嫌いじゃないし!」
「へー、うらやましい」
「なあ、授業終わったら屋上いかね?」
「なんで私と田島が」
「だってもっと近くで見たくねえ?久しぶりのコバルトブルーの空だぞ!」
「コバルトブルー?」
「そうだよ。何か深みのある空の色!今日みたいな!」
「初めて聞いた」
「うちのじーちゃんが言ってたんだ。何かいいだろ!」
「うん、いいかも」
「だろ?だから見に行こうぜ!屋上!」
「・・・・・・うん、そだね」





こうして変な約束が取り付けられた。このとき既に私の頭からは、さっきの苛々は消え去っていて、代わりに田島の言葉がぐるぐる回っていた。コバルトブルー。この綺麗な青空にはぴったりな名前だと思った。田島のおじいちゃん、センスいい。本とかよく読むのかな。どんな人なんだろ、なんて田島のおじいちゃんに思いを馳せていたら、チャイムが鳴った。先生は物足りない顔をしてるけど、そんなのみんなお構いなしだ。その代表と言ってもいいくらいの田島は目を輝かせて私を見ている。まるで散歩に行きたがってる犬だ。でもそれが何だかいいと思った。田島らしいって言うのもなんか変だけど。





、はやく!」
「ちょ、待って」
「よーし、競争な!」
「え、私走るの苦手!」









コバルトブルー
真っ青な空と田島の笑顔、そしてはにかむ私。










実験的な感じ。こういう書き方も楽しいかもしれない!
夏は田島のお話をたくさん書きたいです。さわやか。

2009/07/19


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