公園で昼寝をしてたら、どういう因果か土方に見つかった。 テメェに客人だとだけ言って、踵を返すニコチン野郎に舌打ちをしながら起き上がる。頭上の太陽と影はさっきと同じ位置だから、俺の至上の時間は開始早々に邪魔されたと考えて間違いないだろう。今日に限ってなんなんでィ・・・マヨでも仕入れに来たんだろうか。寝ぼけ眼で立ち上がると、足元には猫が数匹。そういや今日は真選組ソーセージをかっぱらってくるのを忘れたなあ、なんて思いながら、そいつらを跨いだ。 万事屋の旦那は相変わらず、困ったときだけ猫なで声で現れるし、チャイナはいつも通りの怪力馬鹿で、近藤さんは日課のストーキング中ときたもんだ。今日も今日とてかぶき町は安泰。土方の嘘(俺はそうだと踏んでる)に仕方ねェから付き合ってやってみたが、この様子だとただ単に昼寝が気に食わなかっただけみたいですねィ。くだんねえ、ひたすらくだんねえや。こんなんなら無視して二度寝すりゃよかった。 気晴らしにふらっと駄菓子屋に入ってみる。いつも小煩いババアが、上機嫌にいらっしゃいなんて言いやがった。着物と同じくらいに頬紅を塗りたくった顔面は化け物そのものだったが、当の本人は満足げに口角を上げている。これからでえとでねェ。ああそうかィ。最低限のやりとりをこなして店を出た。相変わらず日は高い。 「 一息に玄関口で叫ぶと、バタバタと騒がしい足音が近づいてきた。・・・何だ、本当にいたのか。俺は靴を脱ぎ捨てると、のっそりと室内に上がった。それにしても落ち着きの無い客人だ、きっと面倒なやつに違いねェ。うんざりした顔で迎えてやろうと構えていると、現れたのは山崎だった。 「沖田さん、どこで何やってたんですか!」 「野暮なこと聞いてんじゃねーや」 「ああ確かに。どうせ公園で昼寝ですもんね。・・・とにかく早く客間に!ずっとお待ちなんです」 「誰が」 「野暮なこと聞かないで下さい。行けば分かります」 山崎はじとっとした目で俺を見ると、またバタバタと去って行った。 「さあて客間はどこだったかねェっと」 好き勝手やるのが仕事のような俺には、客人なんて滅多にない。・・・確か、姉上の時が最後のはずだ。それ以来、客間には足を踏み入れていない。 ・・・もう懐かしむ出来事になっちまったんだな、なんて思った。それでも俺はまだ、姉上と同い年にはなっていないはずだ。 これが俗に言うセンチメンタルっつーやつですかィ、と笑ってみたら、もう目の前は客間だった。仕方なしに、襖に手をかける。 「どちらさんですかねィ」 そのまま待ってみるが、返事が無い。もしかしてここは客間ではなかっただろうか。あるいは客人が予想以上にご立腹かだ。 「・・・・・・・・・あ」 ・・・いや、参った。襖から手を離して頭をかく。こりゃ間違いなく・・・後者だねィ。 「時に御客人、俺ァ今全部思い出したぜィ」 何で土方と山崎があんな態度だったか、そしてどうして襖の向こうの客が怒っているのか、その理由を全て思い出した。 「なんでもご馳走してやっから、中入ってもいいですかィ?」 幸い、今日は金がある。これ以上機嫌を損ねることもないだろう。再び襖に手を掛けて、どんなもんかと待っていると、中から不機嫌な色を少し残したの「どうぞ」という声が聞こえた。
くだんねえや 珍しくタイトルから思いついたお話。 久々の総悟楽しかったぞ! 2010/06/12 |