先日の職業の記事の仕上がりが良かったようで、ご褒美に一日だけ休みをもらえたのだ。あの恐ろしい取材のことを思い出せば頷けるが、それだけでなく、実際に記事もよかったのだ。私は勿論、有り難く頂戴した。そしてまた編集長に呼び出されたら嫌なので携帯を手の届かない所に置いた。勿論、電源を切る勇気なんて、私にはない。 とはいえ。私は新聞のテレビ欄を見つめて顔をしかめた。平日の午前中は情報番組ばかりでつまらない。職業柄、チェックは入れておいた方がいいのだろうとは思うが、今日はそういうものから解放されたい気分だった。何も考えずにぼーっとする。なかなか味わえない至福の時じゃないか。 私は、リモコンをテーブルに置いた。そして広げたままだった雑誌を手に取る。あの記事が載っているやつだ。写真が数枚と、どうにかしていい話へと仕立て上げたインタビュー内容が、一人につき半ページ分掲載されている。取材時の自分の記憶とこの記事を照らし合わせてみると、改めて文章の偉大さに気づかされる。だってこれ読んだ限りだと、この四人はみんなまともな人に見えるもんな。生徒思いの高校教師に、頼れる万事屋のオーナー、姉御肌のホステス、そしてイケメンのホストときたもんだ。後半の三人にはきっと連絡が殺到していることだろう(わが社のこの雑誌は、意外と売れ筋なのだ)。それくらい、脚色だらけの記事だったりする。 やれやれ、久々の大仕事だったなあ・・・。私は息をゆっくり吐いて、雑誌を閉じた。 こうやってゆっくり考えてみると、楽しい取材だったな、なんて思ってしまうから不思議だ。心に余裕があるからなんだろうか。あの時はただただ気が立ってたような気がするからな、主に編集長に対して。 「もう、あの人たちに会うこともないだろうなー」 高校は勿論、かぶき町に出向くことも皆無と言っても過言ではない私だ。街でばったり!のような漫画みたいな展開も期待出来ない。・・・まあ、それでいいんだけど。 「違うな・・・それが、いいのかも」 仕事ではない場で会ってしまったら、まずい気がするんだ。・・・いろんな意味で。 「しっかりしろー、。相手はただの仕事相手なんだってば」 男性をみんなそんな目で見るようになるなんて、来るところまで来たな・・・。そろそろ彼氏でも作った方がいいよね、私。眉間を押さえてため息をつくと、私は目を閉じた。それにしても・・・四人ともかっこよかった。顔は、ね。 2009/02/21 戻る |