「・・・あれ?」





 ただいまー、と言いながらドアを開けると、明らかに家族のではない靴が玄関にあった。もうこの時点で嫌な予感しかしなかったのだが、ここは自宅だ。入らないわけにはいかない。
 どうか予想が外れてくれますように、と祈りながら、私は自室へと向かった。



「あ、おかえりー」
「・・・・・・当たっちゃった」

    案の定、部屋には招待した覚えのない朱い髪の人が、まるで自分の部屋であるかのように振る舞っていた。

「当たったって、何が?」
「何でもないよ。それより神威、勝手に部屋入るのやめてよね。ていうか帰って」
「ふーん、そういうこと言っちゃうんだ」
「だって、今日はゆっくりしたいんだもん」
「そうなんだ。でももう一回帰れって言ったら、神楽呼ぶから」
「えっ」

 神楽ちゃんが現れるとどういうことになるか、私は瞬時に悟った。この兄妹はすっごく仲が悪いから、顔を合わすとすぐに戦闘モードになってしまうのだ。つまり、文字通り我が家が壊滅してしまう。そんな状況、絶対に御免だ。

「どうぞゆっくりしていって下さい」
「そうそう。二人でゆっくりしてればいいじゃん」

 いつもの笑顔で神威が言う。ものすごくイラッとしたが、まあいるだけなら特に害は無いからいいということにしよう。私は鞄を床に置くと、勉強机の椅子に腰を下ろした。

「ていうか、何で来たの?用事?」
「いや、特に用事は無いよ」
「じゃあどうして」
「さあ、何でだろ。に会いたかったから?」
「なんで疑問形なの・・・」

 私はがっくりと項垂れた。こんなんじゃ全然ゆっくり出来そうもない。今日はベッドでごろごろしながら漫画でも読もうと思ったのに・・・何で神威がそれを満喫しているんだろう。

「あはは、この漫画面白いね、馬鹿馬鹿しくて」
「一言多いって・・・」

 神威はきっと、3時間は帰らないだろう。その間いかにしてこの男を意識から消すか。それが私に課せられた当面の課題のようだ。私はため息をついて、神威に背を向けた。それに気付いているのかいないのか、彼の声が背中に響く。

「ねえ、喉乾いたんだけど。なんか持ってきてよ」
「・・・・・・ちょっと待ってて」

    こうやって言うことを聞いてる間は多分無理だろうな、なんて思いながら、私は自室を出たのだった。








【銀魂】神威END


2010/05/05