私は少し考えた後、裏門という選択肢があることに気付いた。そういえばあっち側って行ったこと無いから、楽しいかもしれない。私は踵を返して、裏門へと向かった。





「うわ、なんかジャングルみたい・・・」

 門はあることにはあった。ただそこに辿り着くまでに結構なエネルギーを消費しそうだ。私は目の前の自由な植物を眺めた。・・・やっぱり正門から帰ろうかな。そう思った時だ。

「・・・あれ、何の音・・・?」

 奥にある茂みの方から、何やらガサゴソという音が聞こえる。猫とかなら別にいいんだが、それにしては音が大きすぎるような・・・?
 私は目を凝らして、音が鳴っているところを探した。怖い動物とかだったらやだなあ・・・さっさと帰っちゃった方がいいかも。大体の場所の目星をつけると、私はそれと逆の方向に歩き出した。
 その瞬間、一際大きくガサッという音がした。

   あーもう!どこいったかなー」
「うわっ!」

 人の声に驚いて振り向くと、茂みの中にクラスメイトの山崎が立っていた。

「ザキ!?何やってんのそんなとこで」
「わっ、さん!びっくりしたー」

 それはこっちのセリフだ、と思いながら、私は彼に向きなおった。とにかく、得体のしれない生物とかじゃなくてよかったじゃないか(うちの学校には、たまに訳のわからない生物が出現するのだ)。

「実は、シャトルなくしちゃって」
「シャトルって、バドミントンの?アレ、いつも使ってなかったよね?」
「そうなんだけど・・・裏門だし、いいかと思って」
「相手いないのにシャトル使ったら、そりゃ無くなっちゃうでしょ・・・」

 言ってから、私は何だか切なくなってしまった。相手がいないバドミントンなんて、私なら絶対出来ない。ザキって案外すごい奴なのかもしれないぞ、なんて感心しながら、私は口を開いた。

「よし、探すの手伝ったげるよ」
「本当に!?ありがとうさん!」
「そのかわり、私が見つけたらバーゲンダッシュ1つね」
「・・・え?」
「ザキの奢りってことなら頑張らないとねー!探すぞー!」

 私は鞄を汚れなさそうなところに置いて、腕まくりをした。探し物は得意なんだよね、私。見つけたら本当にアイス奢らしてやる。

「ちょっと待ってさん!そういうことなら遠慮するって!・・・頼むから探さないでー!」

    私の隠れた能力を本能で感じ取ったのだろうか。私たち以外に人気のない裏門に、ザキの悲痛な声が木霊していた。








【銀魂】山崎退END


2010/05/05