私は少し考えた後、門を出て左に曲がることにした。





「こっち側って何にも無いんだなあ」

 門を右に出ると繁華街だから、見ているだけで楽しいのだが、こっちは住宅地が広がっているので何となくつまらない。私は自然と速足になりながら、その道をまっすぐ歩いた。

「・・・・・・」

    なんか、変な感じがする。
 ここは住宅地なんだから、人の足音がするのは当たり前だと思う。でもそれがぴったりと重なっている状況って、そんなにあることだろうか。ストーカーにつけられてでもしない限り、そんなことって起こらないと思うのだ。
 ストーカー、か。私はおでこに手を当てて、ため息をついた。ホントついてないなあ。まあ、毎日のことなんだけど。

「・・・つけられてると落ち着かないから、出てきてくれる?骸」
「おや、奇遇ですね、
「なにとぼけてんのよ。ずっとつけてきてたでしょ」
「記憶にありませんねえ」
「だってアンタん家、こっちじゃないでしょ」
「クフフ、よくご存じですね」

 後ろの電柱の陰から現れた骸は、嬉しそうに笑った。そりゃあ毎日のように僕の家はこっちなんですって言われてれば、嫌でも覚えちゃうっての。勿論、骸を喜ばせるだけなので、そんなことは口が裂けても言わないが。

「ていうか、堂々と一緒に帰ろうって言えばいいじゃん」
「言えば帰ってくれますか?」
「勿論やだけど」
「本当に貴女は照れ屋さんですね、

    何だか疲れてしまった。私は骸を放置して、歩き出した。どうせまた勝手に付いてくるんだし構わないでしょ。


「もーうるさい。ついてこないで」
「そっちは行き止まりですよ。塀を乗り越えるって言うなら止めませんが」
「・・・・・・」
「道が分からないなら案内しましょう。ほら、ついておいで」

 笑顔でそう言うと、骸は私に向かって手を伸ばした。さすがにそれを取りはしなかったけど、私は大人しく骸についていくことにした。困った時はお互い様だ、と必死に自分に言い聞かせながら。








【家庭教師ヒットマンREBORN!】六道骸END


2010/05/05