そして、レンタルショップに行くことにした。久々だから長居しちゃいそうだな。 「えーと、SFはどこかな・・・」 たくさんある棚をくるくると見回しながら、私は店の奥に進んだ。こういうのを探すのは、実は結構苦手だったりする。かといって店員さんに聞くのもちょっと恥ずかしいので、私はひとつひとつジャンルを確認しながら歩くことにした。 「ラブコメ、アクション、サスペンス、アニメ・・・あれ、こっちじゃないか」 全然違う方に歩いてきてしまったと苦笑しながら、私は踵を返そうとした。したのだが、視界の端に金色が映ったので、私は足を止めてしまった。あれってもしかして、利央じゃないか? 「・・・あ、やっぱりそうだ」 制服で金髪でエナメルバッグだから、間違いない。こっそり追っかけて、驚かしちゃおうかな。びっくりした利央の顔を思い浮かべながら、私は彼の後を追った。 彼はきょろきょろと周りを見ながら、奥へと進んでいく。そして彼が立ち止まったところは 「・・・り、利央!そこはまだ早いよ!?」 「えっ?」 計画もむなしく、私はつい声を掛けてしまった。だってだめだ、あの可愛い利央がもうそっちに手を出すなんて・・・!いや、高校生だから普通なのかもしれないけど、でもレンタルはまずいって! 「あ、さん!偶然ですねー」 「誤魔化したってだめだよ利央・・・でも大丈夫、私そういうの理解あるから」 「え、何言って・・・あ!」 その瞬間に目の前のコーナーに初めて気づいたように、利央はのけぞった。 「ち、違いますよ!俺はあっちに用があって・・・」 「だから照れなくても・・・でもね、多分それ制服じゃ借りられないから、私服に着替えてきた方がいいよ。あーでも利央童顔だからなあ・・・和さんとかに・・・」 「だから違うって!」 顔を真っ赤にして、利央は叫んだ。・・・この感じだと、本当に私の勘違いだったのかもしれない。何か悪いことしちゃったなあ。申し訳ないと思いつつ、私はとりあえず笑っておいた。 「あそっか、違ったんだ。ごめんね利央」 「・・・さんホントタチ悪いっす・・・」 ため息をついて、利央は頭をかいた。相変わらず顔は真っ赤なままだ。こんな状況であれだけど、やっぱり利央は可愛いなあ。私は唐突に利央の頭を撫でて、そのまま出口に向かって歩き出した。 「ちょ、何すか!」 「お詫びにジュースおごったげるよ。外で待ってるから、早くレンタル済まして来てねー」 「ええ?そんな勝手に・・・ちょっと、サン!」 焦ったような利央の声を背中に聞きながら、私はつい笑ってしまった。きっと彼は、私の姿が見えなくなった瞬間に、慌てて用事を済ませて出てくるに違いない。そういうとこ、本当に律儀だからなあ。 「ホント、可愛い後輩だなあ」 店の外のベンチに腰かけながら、ちょっと準太の気持ち分かるなあ、なんて思ってしまった。
【おおきく振りかぶって】仲沢利央END |