私は、目の前の変わった鞄を開いた。変わった、としか形容できないそれの中身は、どうやら私の荷物のようだ。その事実は、ますます私を混乱させた。 「・・・わざわざ入れ替えたってこと・・・?」 何のために、そんな面倒なことを。まあ、もしもこれが嫌がらせならば、十分すぎるほどにその威力を発揮してはいるのだが(それほどに変な鞄なのだ)。 私は鞄を持ち上げて、くるくると回してみた。白いトートバッグ、というのが一番近く、かつ分かりやすい表現だろう。それだけで十分だったのに、変な黄色いくちばしのようなものや、肌色の足のようなものを無造作に縫いつけてしまったのがまずかった。そういう付属品が無ければ、まだ受け入れられたかもしれないのに・・・。 「可哀想なバッグ・・・」 「可愛いバッグってゆうたか?そうかー気に入ってくれたかー!」 「・・・え?」 声のした方へ目を向けてみると、そこには同じクラスの変わり者、坂本辰馬が立っていた。この忙しいときに面倒なヤツが来たなあ。私は彼にバレないようにため息をついた。 「気に入ってくれたかって、まるで坂本のプレゼントみたいな言い方だね」 「そうやけど?」 「え?」 「それ、わしのお土産やき」 「そうなの!?」 私は、その変なお土産と、坂本とを交互に見た。確かに、坂本チョイスということなら、このセンスも納得できる気がする。 とりあえず事件じゃ無かったことに安心しつつ、私は鞄を机に置いた。安心はしたけど、この鞄で下校出来るほど度胸があるわけでもない。とにかく鞄を返してもらわないと。 「お土産はありがとう、坂本。それで、私の元の鞄はどこに?」 「・・・アッハッハ」 「・・・?」 「忘れたぜよ」 「・・・ええ!?」 高らかに笑い続ける坂本を視界の端に捉えながら、私は呆然としてしまった。忘れたって、そんな・・・学校に持ってこれそうな鞄、アレしか持ってないのに。 「ちょっと坂本、お願いだから思い出してよ!」 「うーん・・・どこやったかなー・・・でももそれ可愛いってゆうてたし、問題無いろー」 「問題ありすぎ!第一可愛いって言ってないし!」 「そうじゃったか?アッハッハ」
【銀魂】坂本辰馬END |