するとそこには、筆箱みたいなケースが入っていた。小さな入れ物なのにやけに重い。

「・・・何だこれ・・・?」

 恐る恐る開けてみると、中にはドライバーなどの工具が入っていた。何でこんなものが私の鞄の中に・・・?ていうか学校に持ってくる必要性が分からない。私は首を傾げながら、持ち主として考えられるなら誰だろう、とクラスメイトの顔を思い浮かべた。

「うちのクラスだと・・・あの人が有力かな」

 私は携帯を取り出して、アドレス帳を開いた。そういえば彼には一度もメールしたことなかったな。どんなメールが返ってくるんだろう。絵文字とか多用してあったら意外で面白いのに、なんて思いながら、私はメールを打った。

「えーと・・・『入江さあ、工具無くしたりしてない?』と・・・」

 そっけない文面かとも思ったが、悩んだせいで帰るのが遅くなるのは嫌だ。用件だけなら入江もすぐに返信してくれるだろうと思いながら、私は席を立った。それと同時に携帯が鳴る。

「わ、はやっ」

 やっぱり機械に強い人は違うな、なんて変に納得しながら、メールを開く。『無くした!もしかしてどこかで見かけた?』と、絵文字は全く無い文面が目に飛び込んできた。まあ、予想通りだったな。

「私の鞄の中にあったよ。急ぎなら届けに行こうか?、と」

 学校に持ってくるくらいだ、彼にとってこれはすごく大切なものなんだろう。とはいえ届けに行くは言い過ぎたかも知れないなあ、と私は苦笑した。入江の家知らないよ、私。

『えっと・・・それじゃあ、正門の近くの公園で待っててくれる?すぐ行くから』
「了解、と。学校で見つけといてよかったなあ」

 工具ケースをいろんな角度から見ながら、私は廊下に出た。それにしても、どうして私の鞄の中にあったんだろう。理由として考えられるとしたら・・・やっぱりアレか。





   入江さあ、もしかしていじめられてる・・・?」
「・・・ええ!?」

 駆け足で現れた入江に、私は早速さっき思いついた疑問をぶつけた。だが息が上がっている入江はただ不思議な顔をするばかりだ。さすがに唐突過ぎたかと、私は頭をかいた。

「あ、ごめんごめん。大事なものを人の鞄に入れられちゃう状況って、そんな無いからさあ」
「あ、そういうことか。・・・それよりありがとね、わざわざ連絡まで」
「いえいえ。これくらいどうってことないよ」

 顔の前で手を振って言うと、入江は何だか恥ずかしそうに笑った。入江ってこんな風に笑うんだ、知らなかったな。目新しくてじっと見ていたら、私まで何だか恥ずかしくなってしまった。

「そうだ、さっきの質問だけど」
「え?」
「いじめられてるってやつ。あれ、違うんだ」
「どういうこと・・・?」
「なんていうか・・・どちらかというと、背中を押されてるって感じ、って言ったら分かる?」

 頬をかきながら、入江は確かめるように私を見た。・・・え、どういうことだろう。よく意味が分からなくて、正直にそれを伝える。すると彼は困ったように笑った。

「・・・それなら、まだそのままでいいんだ。僕が頑張るから」







【家庭教師ヒットマンREBORN!】入江正一END


2010/05/05