「・・・ん?」 階段に差し掛かろうかというところで、私は足を止めざるを得なかった。だってそこには・・・人が倒れていたから。 「ちょ・・・大丈夫ですか!?」 見慣れない光景に焦りながらも、私はうつ伏せに倒れているその人に駆け寄った。ヤバそうだったらどうしたらいいのかな、先生を探しに行くべき?それとも救急車?答えは出ないが、そんなのはとりあえず後回しだ。 肩に手を当てて、少し揺さぶってみる。すると意外にもすぐに反応があった。 「クッ・・・!」 「だ、大丈夫ですか!?どこか痛みますか・・・?」 「ああ、心配ない・・・ちょっと転んだだけだ・・・クッ・・・!」 「・・・・・・?」 ここで私は異変に気付いた。実はこの高校、廊下に人が倒れているなんて日常茶飯事なのだが、いつもだったら被害者は短髪の男性なのだ。それが今日は長髪の男性なのである。 「あの、もしかして桂?」 「ああそうだ、桂だ・・・クッ」 やっぱりそうだったか、と私は肩を落とした。桂なら、駆け寄る必要なんて無かった。だってこの人、本当に一人で転んだに違いないから。 「だからさ、前から上履きのサイズ合ってないよって教えてあげてたじゃん?」 「、貴様の目は節穴か・・・?どう見たってじゃすとふぃっとだろう」 「かかとの後ろに指三本入るのはジャストじゃないんだなー残念ながら」 「何っそれは本当か・・・!?謀られたか・・・クッ・・・!」 桂は悔しそうに言いながら、何事も無かったかのように立ち上がった。きちんと服をはたくところが妙に腹立たしい。そもそも何のためにずっと倒れてたんだろう、この人は。 「とにかく、転ばないためにも上履きは買い直すべきだよ」 「それは断る」 「何で!」 「と話せる機会が減ってしまうからに決まっておろう」 「・・・は?」 意味が分からなくて桂を見ると、何故か笑顔を浮かべている。えっ、なに?何この状況・・・? まるで少女漫画のワンシーンのようではあるのだが(そして通常ならヒロインがどきどきするところなのだが)、相手が桂じゃ成り立つものも成り立たない。私は頭を抱えたい気持ちを抑えながら、とりあえず返事をした。 「私さっき、転んでる桂にはもう一生声掛けないって決めたから、だから買い直しても問題ないよ?」 「そうなのか?じゃあ潔く買い替えよう」 「え、てかなに?桂って私のこと好きなの?」 「好きじゃない、愛しているんだ」 「え・・・ごめん、ちょっと気持ち悪い・・・・・・それじゃあ」 まさかの告白に動揺した私は、その場を離れようと桂に手を振った。桂って顔は美形だし、普通に話してる分には何の問題もない人なんだけど・・・ものすごい変人だからなあ。 惚れられちゃ困る、というのが、正直なところの本音である。 「ま、待ってくれ!俺は・・・ぶほォ!」
【銀魂】桂小太郎END |