「・・・どうしよう、でもまあ、明日でもいいか。置きっぱにしとけば忘れないし」

 どうせと言ったらアレだが、アイツは絶対に自宅学習とかしないタイプだ。明日でもきっと何の問題もないな。私は発見した教科書をまた机の中にしまって、立ちあがった。





「いーずみ!」
「・・・
「あれ、何か機嫌悪い?」

 次の日、泉のもとを訪れると、彼は珍しく怒っていた(勿論本気ではないようだったが)。どうやら昨日は宿題が出ていたとかで、結構苦労したということらしい。

「だから昨日返せっつったじゃん。家で探したっつーの」
「ホントごめん悪かった!ジュース奢るから許してー!」
「・・・言ったな?」
「・・・あ、もしかしてハメた!?」
「そういうわけでもねーよ?実際悪いのはだしなー」

 そう言いながらも、泉はにやにやしている。なんて奴だ。私はため息をついた。

「もー分かったよ。何がいい?」
「コーラな。昼屋上にいっから、持ってきて」
「はいよー」

 返事と同時に、私は泉のクラスから出た。昼休みにコーラ。忘れたら今度こそ本気で怒られそうだ。私は脳に刻み込むつもりで繰り返した。

「それにしても、昼休みか」

 昼休みに男の子と屋上なんて、まるでデートである。相手が泉ってのはちょっとなー、浜田くんとかのがいいかも。
 まあ泉も、顔だけはかっこいいんだけどね。それから野球してるときかな。あれは私もびっくりした。それから・・・。

「・・・って、なんで泉のかっこいいとこ探ししてんの・・・」

 こんなんじゃ、私が泉のこと好きみたいじゃん。
 あり得ない思いつきに吹き出しそうになるのをこらえながら、私は慌ててクラスに戻った。








【おおきく振りかぶって】泉孝介END


2010/05/05