「千代さあ、今日すぐ帰るの?」 日誌を書きながら、私は隣の席の篠岡千代に尋ねた。今日は野球部は休みなはずだし、もしかして暇なんじゃないかと思ったのだ。しかし私の期待もむなしく、彼女は苦笑した。 「うん、帰るー。今日用事あってさ」 「そっか、残念。頑張ってねー」 「うん頑張るよ!絶対今晩中には終わらす!」 マネジの仕事でもあるんだろうか?小走りで教室を出ていく千代の背中を見ながら、私はちょっとうらやましいと思った。やっぱり帰宅部より部活入ってた方が楽しいに決まってるよね。 京子とか妙ちゃんに声かけてみようかな、とも思ったが、そこまでしてどこかに遊びに行きたいという気分でもなかった。今日はまっすぐ帰るか。私は書き終えた日誌をぱたんと閉じると、のろのろと立ちあがった。 * 机の横にかけておいた鞄を机にのせて、机の中の教科書に手を掛ける。そこで私の動きは止まった。 「・・・ん?なんか・・・」 @机の中に入ってる・・・? A鞄に違和感・・・? B違和感・・・?と思ったけど気のせいだった。 2010/05/05 |