のらりくらりとしている間に、今日の授業が終わってしまった。もちろんサボってぶらぶらしていたわけじゃない。ちゃんと教室で椅子に座ってはいたけど、何も聞いてなかったからそう言ってみただけだ。でも心配しないで、ちゃんと宿題の場所はメモってあるから。そういうところはちゃんとしているのだ、私は。



「千代さあ、今日すぐ帰るの?」

 日誌を書きながら、私は隣の席の篠岡千代に尋ねた。今日は野球部は休みなはずだし、もしかして暇なんじゃないかと思ったのだ。しかし私の期待もむなしく、彼女は苦笑した。

「うん、帰るー。今日用事あってさ」
「そっか、残念。頑張ってねー」
「うん頑張るよ!絶対今晩中には終わらす!」

 マネジの仕事でもあるんだろうか?小走りで教室を出ていく千代の背中を見ながら、私はちょっとうらやましいと思った。やっぱり帰宅部より部活入ってた方が楽しいに決まってるよね。
 京子とか妙ちゃんに声かけてみようかな、とも思ったが、そこまでしてどこかに遊びに行きたいという気分でもなかった。今日はまっすぐ帰るか。私は書き終えた日誌をぱたんと閉じると、のろのろと立ちあがった。



*





    そんなにゆっくりしていたつもりはないのだが、教室に戻ってきてみるともう誰もいなかった。なんだか寂しい、なんて柄にもなく肩を落としてみたが、誰もいないんだから何の意味もなかった。何やってんだろうなーもう。ため息をつきながら椅子に腰かける。さっさと片付けて、帰ろうっと。
 机の横にかけておいた鞄を机にのせて、机の中の教科書に手を掛ける。そこで私の動きは止まった。

「・・・ん?なんか・・・」



@机の中に入ってる・・・?
A鞄に違和感・・・?
B違和感・・・?と思ったけど気のせいだった。





2010/05/05