そういや、昔はよくこうやって、隣で昼寝してたよな・・・。
徐々に働かなくなる脳の隅っこで、俺はうっすら思い出していた。



席替えをして、窓際の席になってからというもの、俺の睡眠時間は格段に延びた。
初日こそ、授業のたびに先生が俺を起こしにきたが、日当たりがいいから悪いんでさァと平然と言い放てば、それ以来一度もそんな無駄なことをしにくる人はいなくなった。ま、無難な選択だねィ。
春先の日差しはゆるく俺の背中を暖めて、風は滑るように吹き抜け、俺の髪を揺らしていく。なんかこんなこと前にもあったよなと記憶を辿る。最近じゃなくて、もっとずっと昔のことだ。
確か俺は大の字になって天井を見てたんでィ。そうだ、あのときは昼寝の時間だったんだ。寝なきゃいけないと思う程、脳ははっきりしてくるんだよな。ひでージレンマだ。
困った俺は、なんとなく寝返りをうった。そしたら、何故かそこには人がいた。俺と同じくらいの背丈の女で、気持ちよさそうに眠ってたんだ。その寝顔があんまり幸せそうなもんだから、眠れなくてイライラしていた俺は、そいつの頬をつねった。起きるかと思ってワクワクしていたのだが、そいつは一瞬痛そうな顔をしただけで、また元の寝顔に戻ってしまった。俺はがっかりして、そいつに背を向け、目を閉じた。意外にも、その後すぐに、俺は眠りに落ちることが出来た。
一種の安心感だったのだろうか?今考えても、はっきりとした答えは出ない。



「ったく・・・目冴えちまった」
眠りに着く前の本のような効果を期待して昔のことを思い出していたのに、意識がはっきりしてしまっては逆効果だ。俺はうつ伏せていた上半身を起こすと、肘をつき、隣で規則正しく寝息を立てている女をちらりと見た。
こっちはお前のせいで目が覚めちまったっていうのに、そんな気持ちよさそうに寝やがって。またあの時みたいにつねってやろうか。ただし、今度は手加減しないぜィ、
・・・、か。こんな風に呼んだのは何年ぶりかねィ・・・ま、声には出してないけど。
視線を黒板に移す。へえ、今は英語だったのか。と驚いていると、近藤さんの後ろ姿が目に入った。
そういや近藤さんは今も変わらず、コイツのこと『』って呼んでるよな。あの人は羞恥っていう感情が欠落してるから仕方ないか。いい意味でだけど。
・・・そう、いい意味で。俺は今更コイツのことをって呼んだりは出来ないんでィ。お互いもう、『』と『沖田』になっちまったんだ。この関係は、たとえ席が隣でも、家が隣でも、もう変わることはない。
「幼馴染っていうのも、こうなると厄介だねィ」
今隣で寝ているは、あの頃のじゃねーんだ。
もちろん、俺だって。

再び目を閉じると、昔のの寝顔が脳裏をよぎった。
そしてまた俺は、眠りにつくんだ。
今の俺は、幸せそうな寝顔を浮かべているのだろうか。










昼寝の時間
夢の中の時間は、止まったまま ずっと ずっと









2008/04/07


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