俺は最近、携帯を買い換えた。使い始めてから大分経っているからなのだが、第一の理由は別にある。最近総悟に携帯を使った嫌がらせをされているので、メールアドレスを変えるついでに携帯も変えてしまおうと思ったのだ。・・・あ、今、『そんな理由?ダサー』っとか思っただろ。言っとくけどアレ怖いんだからな、毎日自殺勧誘メールが送られてくるんだからな(俺は以前総悟に、自殺サイトに勝手に会員登録されたことがある)。 今のところ、ヤツに携帯を奪われてはいない。いつまでこの平穏が続くか分からないが、とりあえずこれからも防御の姿勢は崩さないつもりだ。 「あ、トシ携帯変えたんだ」 「おう。結構長いこと使ってたからな」 「へー・・・あ、コレあたしが欲しかった機種だ!ちょ、パクったでしょ」 「パクったも何も知らねーよ」 俺の携帯を取り上げて、じろりと睨んでくるこの女は。3年間クラスが同じな上に、剣道部のマネージャー。いわゆる腐れ縁ってやつだ。やけに気が強いコイツは、何故か俺を目の敵にしやがる。 「いや、絶対知ってるよ。前話したもん。ね、総悟!」 「ええ。土方さん忘れたんですかィ?ありえねェや。やっぱ自殺サイトに会員登録するから携帯貸せコノヤロー」 「誰が貸すか!てかやめて。マジやめて」 俺は記憶を辿ったが、どうも覚えがない。どうせ二人で話を合わせてるだけだろうとの様子を窺うが、どうもそうではないらしい。『トシはあたしの言ったことなんてどうでもいいんだよね』って彼女気取りかよ。こっちから願い下げだっつの。 「・・・あ、もしかしてあたしとお揃いにしたかったの?」 「だから知らなかったって・・・」 「え、すごいキモイんだけど。お揃いとかすごいキモイんだけど」 「だから違ェェェ!お前は人の話を聞け!」 「その言葉そのままバットで打ち返すよ」 俺はため息をついた。もうこりゃ会話にならねェ。ちょうどヤニも切れそうだったので、立ち上がって教室を出る。昼休みはあと20分か・・・十分だ。 * 深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す。もう一度、と煙草を口に運んだところで、ポケットの携帯が振動した。顔をしかめて取り出すと、からの着信だ。一体何の用だ? 「何だよ」 『煙草はダメ、って言ったでしょ』 「は?何で・・・お前俺の近くにいるのか?」 『アンタが1人で出てくときすることなんて想像つくっての。屋上で煙草でまず間違いない』 「それもそうか。・・・んで、それが用事か?」 『・・・悪い?早く消しなよ』 「へーへー」 渋々、つけたばかりの煙草を消す。見えてないんだから消さなくてもバレないのだが、コイツは変に鋭いところがある。ここまで来られても正直迷惑だ。 「消したぜ。んじゃ切るぞ」 『・・・・・・顔が見えないから言うけど』 「あ?」 『だから、顔が見えないから言うけど!』 「・・・・・・?」 『・・・煙草なんか吸って、トシが病気になったら嫌だから、こうやってわざわざ注意してあげてるんだからね!』 「・・・・・・・え」 『顔合わせると意地張っちゃって言えないから・・・・・・でも、あたし』 「・・・・・・なんだよ」 『・・・あたし、こう見えて・・・トシのこと、が』 |