私は新聞委員だ。他の面倒な委員会や係をやらされるくらいならば、名前だけの(だと聞いていた)新聞委員になってしまった方が得策だと思ったのだ。実際それは名案だった。今日までは。 「・・・失敗したー・・・新聞委員なんてやるんじゃなかった」 先ほど配られたプリントを見ながら、私はため息をついた。 新聞委員は仕事がないなどと思われているなんて恥ずかしい。我が新聞委員会は行動することによってこの委員会の重要性を主張すべきだ。そんなことがずらずらと書かれている。要は、新聞を発行するということだ。 脳裏に熱く語っていた委員長の姿が浮かぶ。彼はテスト前で忙しい私達に、こう言い放ったのだ。今日中にクラスでアンケートを取ってくること。テーマは、『お弁当のおかずと言えば?』だそうだ。どうでもいいと皆が思った・・・それは空気的に間違いなかったはずだ。でも、委員長は気づかなかった。そして笑顔でアンケート用紙を渡してきたのだ。 「・・・じゃあ、用紙を配るので、各自記入して下さい・・・と言いたい所なんですが、配るのさえ面倒なのでその場で答えて下さい」 「どんだけ面倒臭がりなんだよ」 「えー、ツッコミを入れられてちょっとイラッとしたのでトップバッターは土方くんお願いします」 「え、俺かよ・・・まあいい。俺はマヨネーズが」 「はいもう十分です。んじゃ次は新八くんで」 「ちょ、テメ、最後まで聞けっつの!」 「僕ですか?僕は・・・卵焼きかな」 「あら新ちゃん、そんなに私の卵焼きが食べたいの?」 「あああ姉上ェェェ!違います僕が言ってるのは別の卵焼きのことで・・・・・・アアアアア!」 「新八ー、目が痛いなら保健室行った方がいいネ」 「ちなみに私はバーゲンダッシュよ、ちゃん」 「おかずがアイス!?すごいなあお妙ちゃん・・・。神楽ちゃんは何が好きなの?」 「私はふりかけご飯があれば十分アル。チャラついたおかずには興味ないネ」 「なるほど、潔いかも。んじゃ沖田くんは?」 「俺はサーロインステーキでさァ」 「冷めないように細心の注意を払わなきゃいけないから大変だ・・・ご苦労様です。近藤くんは?」 「俺はからあげ派だが、夜のおかずはおた」 「夜の話は全然聞きたくないんでやめて下さーい。てか生き延びたいなら言わないほうがいいと思う。」 ふうと一息つく。これで前の方の人は終わった。残りは・・・うわ、曲者ぞろいだ。あまり気乗りしないが、仕事は仕事。テンションを無理に上げて、後ろの方の人に声をかける。 「えーっと・・・じゃあ桂くん、教えてもらえるかな」 「おかず、だと・・・?気の抜けたことを言うんじゃない!攘夷志士・・・やべ、間違えた。高校男児たるもの、日の丸弁当を食さず何を食せというのだ!大体」 「わ、わかったもういいです!梅干って書いとくから!じゃ、じゃあさっちゃんは?」 「勿論、銀八せ」 「もういいです!ていうか思考回路近藤くんと一緒じゃん!じゃあ山崎くん」 「フンッ、フンッ」 「頼むから聞いて・・・・・・じゃあいいや。えーと東条くんは生卵、じゃあ九ちゃんは?」 「どうして勝手に決めるんですか!私にも聞いて下さい!」 「私は・・・・・・・タコさんウインナーだ」 「・・・・・・可愛い!」 「若、流石です!若の可愛らしさを何百倍にもアップさせるような食材をお選びになるとは!こうなったらこの東条歩、若のために心を込めてタコさんウインナーをお作りしま」 「心から遠慮する」 ズシャアアアアと、東条くんが滑らかに床を滑っていった。それを目で追っていたら、その先に、最後の回答者が座っていた。出来れば声をかけたくないけど・・・仕方ない。 「じゃあ最後は・・・・・・・高杉くん、お願いします」 教室の空気が、凍りつく。そりゃそうだよね、こんな下らない質問なんかしようものなら即座にキレそうだもんね、彼。 祈るような面持ちで、高杉くんを見つめる。彼は・・・笑った。 「・・・・・・・・・・・・チェリーパイに決まってんだろ?」 「・・・・・・・・・・・は?」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・バ、バカかテメェ・・・冗談に決まってんだろ」 「・・・え?・・・あ、そうだよねーそうに決まってるよね!・・・ア、アハハ高杉くんおもしろーい」 |