「どうですか皆さん!今こそ、あの忌々しいスカートジャージーの存在に異議を唱えるべきだとは思いませんか!」 声高らかに叫ぶと、皆が私に注目した。・・・わけもなかった。3Zは他人に関心を持たない生徒が多いことで有名なクラスである。 「い、今、貴様らが忙しいというのは私も重々承知している!でもちょっとぐらい話を聞いてくれてもグハァッ!!」 突如横からキックが入った。何事かとそちらをみれば、唾を吐きつつ冷たい視線を送る神楽さんの姿があった。 「うるさいネ生卵。アツアツのご飯にぶっかけられたいアルか」 「な、生卵!?確かに私は玉子がけご飯は好きだけれども!」 「そーだそーだうるさいぜィ。えーと・・・男性器?」 「いや、それ、私じゃないんで。例の噛ませ犬のことなんで」 全く・・・このクラスで話をするのには骨が折れる。脱線しすぎて何の話をしていたのか忘れて・・・・・・ああ、そうだ。 ゴホンと咳払いをして、もう一度声を張り上げる。さっきよりかは聞いてもらえることを期待して。 「皆さんは不可解に思わないのですか!制服という青春の代名詞を無条件で与えられ、しかもそれに見合った美脚を授かった女生徒達が、何故わざわざジャージーというダサイことこの上ないものを穿いてしまうのか。おかしいとは思いませんか!足を出していても文句を言われたりしないこの状況下で、自分から足を隠してしまうなんて。この状況を打破すべく、私は立ち上がった!今ここに宣言します。私達は、スカートジャージー撤廃運動をゴフッ・・・!」 今度はパンチが入った。頬を押さえて振り向けば、すかした顔で土方君が立っていた。 「ちょ、何ですか!」 「いや、なんか『ジャージー』ってのがイラッとしたから」 「私も以前注意したのだが・・・東条、お前は人の話を聞け」 「わ、若ァァァ!あなたも私の話を少しはお聞きになって下さい!ほらそんなイモっぽいジャージーは脱いで・・・ギャッ!」 「だからジャージだと言っている」 思いっきり踏まれた足をさすりながら、私は床に腰を下ろした。私はただ自分の意見を主張しただけなのに、どうしてこんなボコボコにされなくてはならないのか。私はただ・・・あの人に・・・。 「・・・あの、東条さん?」 「何でしょう、ツッコミ所がないイコール出番がない新八君」 「気にしてること言うなァァァ!っていうかフォローしてあげようと思ったのに何その態度!」 「それは失敬。まさか気分を害されるとは思いもしませんでした」 「え、今の悪口じゃなかったの?・・・まあいいや。あの、何でそんなにスカートジャージ撤廃に固執するんですか?別に放っとけばいいと思うんですけど・・・」 「それでは・・・ダメなんです」 「え?」 「それでは・・・さんの冬の生足が拝めないまま、卒業になってしまうではないですか!」 「・・・は?」 私は勢いよく立ち上がった。そうだ、これが理由なのだ。私がここまでスカートジャージー撲滅を推進するのは!そりゃ私も男ですからね、好きな方の生足を拝みたいと思うのは当たり前でしょう。それをあの布地が邪魔しおって・・・何と忌々しい。出来ることなら創始者を斬ってしまいたい。それくらい、私は腹が立っているのです。 「分かって頂けましたか!この行動の理念が!」 「分かりたくもない、ということはよく分かりました」 「ん?」 私は辺りを見回した。てっきり賛同してくれると思ったクラスメイトの視線は、明らかに軽蔑の色を含んでいる。私にとって明らかにアウェーなこの空気の中、静かに沖田君が口を開いた。 「対象が1人なら、本人に直接言ったほうが早いんじゃないですかィ?」 「・・・・・・ああ、成程!」 私は何て迂闊だったのだろう、彼に言われるまでそれに気づかなかったとは・・・!面と向かってさんに、そんな服装はやめて下さいって言えばそれで一件落着になるではないか!きっと彼女は言うことを聞いてくれるに違いない。だってあの子いい子だし。何てったってロフトでバイトしてますからね、彼女。 私は静かに足を踏み出した。教室後方で携帯をいじっているさんの元へ、迷いなく進んでいく。 「・・・・・・あの、さん、ちょっとお話が・・・」 「ん、なに?」 「突然何言い出すんだと思われるかもしれませんが、スカートの下にジャージーを穿くというのは・・・」 「あ、コレ?暖かいから気に入ってるんだよねー。まあ外見はちょっとアレだけど」 「・・・あ、そうなんですか。確かにねー女性は体冷やすといけませんから。ナイスアイデアだと思いますよ全く」 |