昔からとてもじゃんけんの弱い私は、今日も例外ではなく、やはり敗北した。しかも一人負けという屈辱的な結果だ。上手いこと誰かと二人で負けたら、一緒にごみ捨て行こうと思ってたのに・・・。この結果に満足した班員は、よろしくねーなどと口々に言いながら、教室を出て行ってしまった。 何て薄情なんだ。男子はともかく、女子は一人ぐらいさ、「一緒に行こうか?」とか聞いてくれてもよくないか?別に仲が悪いとかそういうんじゃないから納得いかない。ちゃっかりしているのだ、3Zの女子は。 「あーもうめんどいー!しかも今日に限ってゴミ多いし・・・」 重たいゴミ袋をゴミ箱から引っ張り出して口を閉める。生ゴミ独特の嫌な臭いがして、私は顔をしかめた。全く、お弁当の食べ残しは出来るだけ神楽ちゃんに寄付してくれないかな。ゴミ箱に捨てるなっての。 袋を半分引きずりながら、教室を出る。このまま歩いていくと、摩擦で袋が破けてしまうかもしれない。でも抱えるのも嫌だしな・・・汚いし。仕方が無いのでそのまま進むと、角のところで坂本先生に会った。 「お、ゴミ捨てか?えらいのー1人でやるなんて」 「別に好んでやってるわけじゃ・・・じゃんけんに負けちゃったんです」 「アッハッハそりゃ気の毒じゃー。よし、わしが一緒に行ってやるぜよ」 「え、いいですよ!1人で平気です」 「何が平気じゃ。重いんじゃろ?袋」 「え?」 何で分かったのかと驚いていると、先生は優しく笑った。 「生徒の考えてることぐらい、お見通しぜよ」 言いながら、とても自然に、私の手からゴミ袋を取り上げる。やけに軽がると持ち上げた先生を見て、ああ、やっぱり男の人ってすごいなと感心してしまった。ちょっとカッコイイなんて思ってしまった。 「こりゃ重いのー。ようここまで持ってきたもんじゃ。えらいぞ、」 「・・・・・・」 わしゃわしゃと髪を撫でられて、私は嬉しさと気恥ずかしさで返事をすることが出来なかった。ちょっとバカだけど、長身だし、よく見ると顔もカッコイイし、優しい先生に褒めてもらえて、嬉しくないはずがない。心臓が突然せわしなく動き出したので、悟られやしないかとドキドキした。 「ん?何か顔が赤いぜよ。熱でもあるか?」 「いえ!違うんです。大丈夫です」 「そうかー?体は大事にせんとな。女の子なんじゃし」 「・・・はい」 女の子、と言ってくれたときの先生の目が何だか優しかったような気がしたのは気のせいだろうか? 他の女の子にはああやって言ってないといいな、私だけだったらいいのにな。 「・・・おーし、ゴミ捨て完了じゃ」 「ありがとうございました。助かりました」 「いやいや。わしもと喋れて楽しかったきに、おあいこじゃー」 笑ってそう言ってくれたのが嬉しくて、私も同じように笑った。・・・その時、先生が驚いたように声を上げた。 「あ、いけん!今日会議なん忘れてたぜよ・・・それじゃあ、また明日なー」 「はい!さようなら」 もう一度私の頭を撫でて、坂本先生は去っていってしまった。 まだ頭に残る温もりに、私は動揺せずにはいられなかった。 |