野球?え、野球?何言ってんの、今の時代はやっぱアレでしょ。ミントン。 そう思いながら、俺は沖田さんの誘いを至極丁寧に断った。遠くで近藤さんが残念そうな声を上げたが、あえて無視した。ここで返事なんかしようものなら間違いなく気持ちが揺らぐ。近藤さんにはそんな不思議な力がある。 別に野球を毛嫌いしているわけじゃない。しかもぞうきんをボール、箒をバットに見立てた明らかに不真面目な野球だ。本気で拒絶するやつなど、滅多にいないだろう。 ただ俺はどっちかっていうと個人技の方が好きだし、団体競技なら道具を使わないものの方が得意だ。だからまあ、やらなくてもいいなら参加しないでいいかな。そんな風に軽く思っただけだ。 そしてもう一つ。俺にはこの誘いを断ることに対するメリットがあった。 「また男共がバカなことしてるアル。ウゼー」 「これだからガキはいやなの。やっぱり銀八先生くらい大人な男性に蔑まれたいわ」 「テメーラ私ニ当テタラ慰謝料100万ナ」 「キャサリンそんな意地汚いこと言っちゃダメよ。やっぱ5000万くらい言っとかないと」 分かって頂けただろうか。・・・そう。男子達がいつも楽しくやっている『ぞうきん野球』は、意外と女子の評判が悪いのだ。 いや、別にね?さっき発言した4人にどう思われようと俺は構わないんだけど。俺が意識してるのは、その4人の横で可愛く笑っているさんだけだから。 「、何笑ってるアルか」 「や、だって皆言ってることひどいから」 「あれ位がちょうどいいのよ。ほら、ちゃんも言いたいこと言っちゃいなさいよ」 「えー?」 志村の姉御、ナイスアシスト!あの感じだときっと、さんは近藤さん達の行動を快く思ってない。んで、『私は教室で暴れるのはあんまり好きじゃないな』とか言って、『でも、山崎くんみたいに、誰にも迷惑かけないでスポーツを楽しんでる人って、素敵だと思うな』とか言って、最終的に『私、山崎くんのこと好きなのかも』とか言っちゃったらどうするよ! うわーやばい、などと一人で興奮していると、ついに、さんが口を開いた。 「私は、楽しそうだしいいと思うけど。やっぱりああやってバカやってるときの男の子ってカッコイイと思うな」 「あら、そう?」 「うん。私は好きだよ」 ・・・・・・・・・・アレ? |