段々と人気が少なくなってくる道を進みながら、僕は大げさにため息をついた。 おかしいとは思ったんだ、お通ちゃんのライブがあるから来いだなんて。親衛隊隊長の僕に情報が来てないはず無いし、何より開催場所が明らかにおかしい。お寺って。そんなとこで普通ライブしないでしょ。 でも万が一本当だったら一番後悔するのは僕だ。しかも何だかんだ言って、無茶なことも真実にしてしまうのが銀八先生という人で、前にも約束通りお通ちゃんを文化祭に呼んでくれたことがある。そういうことがあるから、僕は疑念を抱きつつも、こうしてやってきたのである。 寺の境内が見えてきた。・・・この静けさは、やっぱりはずれか。そうと決まれば用事も無いし、もう帰ろうかな。そう思って踵を返すと、突然叫び声が聞こえた。ギャアアアアというその声。聞き覚えがある。 「今の、銀八先生じゃ・・・」 夜の墓地って確かに怖いけど、そんな叫び声あげるほどじゃないと思うんだけどな・・・。もしかして、肝試しでもやってるんだろうか。・・・あ、そういえばやろうとか言ってたかな。沖田さんが誰かが。そっか今日だったのか・・・って、何で僕には日時教えてくれなかったんだァァァ!結局呼び出すならこんな回りくどい感じにするのやめろよ! 「え、ていうか僕、どうしたらいいわけ?」 呼び出された、ということは、参加しろってことなんだろう。いやでもここ誰もいないし。せめて案内役とかさ、そういう人いてもらわないと・・・。ていうかここに一人でいるのって結構怖いんだけど。 じっと待っていると、今度は土方さんらしき叫び声がした。何なんだよ、何で自分らだけでイベント満喫してるわけ?つーかどこからスタートしてんだよ!僕もそっちにいれてくんない!? 「あーもう・・・やっぱ帰るかな・・・」 「あ、もしかして・・・志村くん?」 「・・・え?」 突然後ろから響いた声に驚いて振り向くと、そこにはクラスメイトの 「さん?あれ、どうしたの?」 「今日、肝試しがあるからって・・・でもよかったー、すぐ志村くんに会えて」 「え、なんで?」 「あれ、聞いてない?あたし志村くんとペアなんだって」 あ、ちゃんとペアとか決まってたんだ。安心したと同時に、少し不安にも思った。僕、さんとほとんど喋ったこと無いんだよね。気まずくならなければいいんだけど・・・ 「じゃ、行こうか」 「・・・うん・・・。あ、あのさ、志村くん」 「ん?」 「・・・あたし、怖いの苦手で・・・あの、腕、貸してもらっても・・・いい?」 「え、あ、うん。いいよ」 「ホント!?あ、ありがとう!」 すごく嬉しそうに笑って、さんは僕の腕につかまった。美人だな、とは前から思ってたけど、こんな風に可愛らしく笑ったりもするんだな。しかも、いい子だ。 寒いせいか、腕に感じる温もりがやけに気になる。ちらっと隣を見れば、怯えた様子のさんが目に入る。守ってあげたいだなんて、ちょっと思ったりもした。 ゆっくりと歩を進めながら、僕は妙な胸の疼きを感じていた。 |