「なに笑ってんだよ」 「いや、別に。続けて?」 「ったく、真面目に聞けよな」 呆れたように言うと、隼人はカップを持った。高校生のくせにエスプレッソだなんて、リボーンくんの真似をしてるとしか思えない。背伸びしたいお年頃か、なんて、同い年なのに思ったりした。 「実は、今までに隠してたことがあんだよ」 「うんうん」 「うんうん、て、驚かねえのか?」 「や、だって人間だもん、隠し事の一つや二つあって当然でしょ」 この私の発言に、隼人の方が驚いてしまったようだ。お前、すげーな、なんて珍しく褒められてしまうくらいだ。その賛辞に私は曖昧に笑っておいた。・・・実は、その内容にあらかた見当が付いているからこその余裕なんだけど。でもそれはまだ言わない。 「で、その隠し事って?」 「実はよ・・・俺、卒業したら、マフィアになんだ」 「ボンゴレ?」 「ああ。・・・え、何で知ってんだよ」 「何でもなにも、バレバレだったよ?」 「いつから?」 「4年前くらいから」 「ほとんど初めからじゃねーか・・・」 隼人はがっくりと項垂れた。あれで気付かない人がいたら逆にびっくりだよ、と伝えると、笹川とハルは気付いてなかったという答えが返ってきた。相撲大会に騙されていたのか、と、私は二人の顔を思い浮かべた。・・・仕方ないか、可愛いもんな。 私はピーチティーのストローをくるくると回した。隼人の様子をうかがってみるが、さっきの体勢のままだ。そんなに落ち込むことかな。ていうか。 「そこまでして隠そうとしなくてもよかったのに」 「だってよ、が・・・」 途中まで言ったところで、隼人はまたカップを持ち上げた。歯切れが悪いのなんて慣れっこだから、すぐに続きを促してみる。隼人はイヤそうな顔をしながら、口を開いた。 「だから・・・が、嫌がるっつーか、びびんじゃねーかと思って」 「じゃなくて、自分が嫌われるかもしれないって思ったんじゃないの?」 「ばっ、んなわけねーだろ!」 乱暴にカップを置くと、隼人は肘をついてそっぽを向いた。ばっかじゃねー?なんて言ってるけど、顔が赤いもんだから全然説得力が無いのだ。可愛いなあ、こんな人に愛されてて幸せだなあ。ふくれっ面の隼人を尻目に、そんなことを思った。 「んだよ、バカにしてんのか?ニヤニヤしやがって」 自然と頬が緩んでしまっていたらしい。こっちを向いた隼人は、眉間に皺を寄せながら、エスプレッソを口に運んだ。もしこれから先、ずっと隼人と一緒にいるなら、エスプレッソをおいしくいれられるように練習しておかないと。・・・まあその前に必要なのは、彼の機嫌を直すことなんだけどね。 私は口を開いた。勿論、隼人がカップを置いた後だ。じゃないと、また怒られちゃうから。 「心配しないでよ。とりあえず私は、隼人ならなんでも好きだから」 |