確かにその通りだ、と私は思った。起こしてと頼む前に、目覚ましを2個でも3個でもセットしておけばよかったんだ。多分私は心のどこかで補習に行きたくないと思っていて、だから自分で起きる努力をしなかったんだ。それなのに、梓に当たるなんて。

「ごめん、梓。八つ当たりだった」

 心から反省してそう言ったのに、それを聞いた梓は驚いたように目を丸くした。

「あ、ああ」
「どしたの?」
「いや、そんな素直に謝られると思ってなくて」
「何それ!」

 私はいつだって素直ですー!と言ってやったら、梓は微妙な顔をした。やっぱり逆ギレしてやればよかった。

「でもさ、梓。何で起こしてくれなかったの?」
「それは・・・」
「それは?」

 梓の隣に腰かけて、答えを待つ。一体どんな理由なんだろう。部屋のカギはかけてなかったし、部屋が散らかりすぎてて入れなかったってこともないと思う。梓の横顔をじっと見てみても、さっぱりヒントにはならなかった。・・・そりゃそうか。

「・・・ね、」
「ね?」
「・・・寝言がすごかったから、だよ」
「・・・え、うそ、ホントに!?」

 自分が寝言をいう人間だったとは知らなかった。ていうか、その現場を梓に見られたってこと!?完全に弱み握られてるじゃん私!
 私は梓が隣にいるのも忘れて、頭を抱えた。梓はそんなことしないと思うけど、でももし言いふらされたりしたら、本当におしまいだ・・・。大体、寝言がすごかったって、一体何を言ってたんだろう。それによって恥ずかしさがだいぶ変わってくるんだけど!

「ど、どうしよう困った・・・!」
「・・・寝顔が可愛かったからなんて、言えっかよ・・・」
「え?」

 私が呟くのと同時に、梓も何かを言った。声が小さくて聞きとれなかったけど。私はそのあと何回も聞いてみたけど、結局梓は教えてくれなかった。むかつくから、左肩をばしっと叩いてやった。

「つーかさ、。今日なんか予定あったんじゃねーの?」
「ん?あー、補習。行こうって誘われてたんだけど、もういいや」
「行かなくて大丈夫なのかよ」
「へーきだよ、私頭いいし」
「・・・へえー」
「あ、ひどい」

 全然信じてないのが丸わかりな梓をもう一回叩く。・・・そういえば、こうやってゆっくり話すのも久しぶりだよなあ、なんて思った。高校だとなんとなく恥ずかしくて、そんなに喋れないし。学校行ってるときの梓って、いつもとなんか違うから。

「そんじゃー次のテスト勝負すっか?頭のいいさん」
「いいよ!でも梓、勉強教えて」
「それじゃ意味ねーじゃん」

 梓はおかしそうに笑った。私も笑ってしまった。ふざけて言ったのは確かだけど、でも内心、本当に一緒に勉強出来たらいいのにな、なんて思ってしまった。









RICOPRA


--- 花井HAPPYEND



ありがとうございました! // 拍手