「流石に適当すぎんだろ、つーかその2人を気安く並べんなよな。ペドロさんに失礼だろ」 「あ、トシってペドロファンだっけ。じゃあなんか・・・マリオとか」 「そりゃもっとだめだな。マリオさんキレんぞ。キレたらやばいんだぞあの人は」 トシは煙草に火をつけた。最初にいいこぶって「煙草平気だから、遠慮しないで」なんて言っちゃったせいで、今はもう断りなしだ。ちょっとは遠慮してよ、言わないけどさ。トシが煙草吸ってる姿、嫌いじゃないし。ていうか好きだし。ああもうなんであたしはこんなにトシのことが好きなんだ。やっぱさ、好きの気持ちは均等であるべきだと思うわけ。でもこの感じだとトシは半年記念日だってことも忘れてるっぽいし?久々のデートなのになんかだるそうだし?明らかに勝っちゃってるよね。むしろベクトルが同方向なのかさえ疑うよね。・・・あ、なんか落ち込んできた。 「おい、?どうしたんだよ突然黙って」 「べっつにー?」 そっぽを向いて唇を尖らすと、トシは灰皿に灰を落としながら、眉間の皺を増やした。 「何その言い方、イラッとすんだけど」 「イラッとさせようと思って言ってるんだもーん」 「あーそうかよ。そういうこと言うんならこのあとの映画はお預けだなァ」 「映画?」 「この前チケットもらってよ、せっかくだから連れてってやろうと思ってたんだけどなー。そういう態度だとちょっとなー。」 「い、行く!行きたい!」 挙手しながらそう言うと、トシはふっと笑った。そして煙草を灰皿に押しつけながら、まあ、記念日だしな。と小さな声で言った。 「え、うそ、覚えてたの!?」 「忘れたなんて誰も言ってねーだろ」 「だって、さっき答えてくれなかった!」 「どういう反応するかと思ってよ」 トシはにやりと笑って、灰皿を隅に寄せた。前から思ってたけど、トシって本当に意地が悪いと思う。覚えてたなら、最初にそう言ってよ。不安になるじゃん。まあその不安な気持ちのおかげで、今とてつもなく嬉しいんだけど。あたしはもう一度そっぽを向いて、ばか。と言った。トシは反省した様子もないくせに、悪かった悪かった、とか言ってる。本当にやなやつ。でもそういうとこも好きなんだよなあ。ああ、あたしってダメだ。本当にどうしようもないくらいに、トシのことが好きなんだ。 会話が切れるタイミングを見計らったかのように、二人分のホットコーヒーが運ばれてきた。ウエイトレスが去ると同時に、トシは口を開く。 「さてさん。突然ですが映画は30分後に上映開始です」 「え、もうすぐじゃん!」 「だからさっさと飲め」 「ちょ、あたし猫舌なんだけど・・・」 「バカかお前、劇場でペドロさんが待ってんだぞ。遅刻とか許さねーかんな」 「・・・あ、なるほど」 |