「おっせーよ」 「講義がのびちゃって」 「・・・ふーん」 修吾は興味が無さそうに肘をついて、そっぽを向いてしまった。なんで拗ねるかなあ。そもそもこの集まりの意味が分からない私は、仕方なしにアイスティーを啜った。 早い時期から寮に入った子だし、幼なじみのお姉さんが恋しくなるのも分からんでもないけど、わざわざカフェにまで呼び出さなくても・・・。こういうとこには、例えば、 「彼女とかさ、いないの?」 そういう子と来ればいいと、思うのだ。お姉さんは。 すると修吾は驚いたようにこっちを向いた。 「い、いるわけねーだろ」 「えー、修吾って見た目はイケメンなのに」 「・・・からかうなよ!・・・つーか・・・」 そこまで言って、修吾は黙った。彼らしくもないなあ、なんて思いながら、私は足を組んだ。そのまま黙って待ってみたが、怒ったような、困ったような顔の修吾は、こっちを向いてはくれない。 「つーか、なに?」 「だから・・・その」 修吾はついに、体ごとそっぽを向いてしまった。どうしたのよ、と聞いても、うるせーと言われるばかりだ。ホント、今日の修吾はどうしちゃったんだ。もう一度ストローに口を付けたところで、修吾が口を開くのが見えた。 「俺は、すっげー急いで来たの。織田とか畠とかに捕まりそうになったけど、どうにか逃げてさー」 「なんだ、そうだったの?無理しなくてよかったのに」 「そーじゃねーって!」 修吾が突然こっちを向いた。あまりの剣幕に驚いて何も言えずにいると、修吾が続ける。 「そこまでしてここに来たってことが言いたいの、俺は。友達との予定より、を優先したんだって、わかんねーのかよ」 私は引き続き驚く羽目になった。 ただの近所の生意気なガキだと思っていた修吾が、今、私の目の前で真っ赤になって怒っている。いや、怒ってるんじゃない。これは・・・。 その先は正直言って、今は考えられなかった。私の頭はまだ、この大幅な変化を処理できていない。私は俯いた。 「わ、わかんない」 「・・・わかってんだろ」 「わかんないよ」 「!」 ゆっくりと顔を上げてみる。真剣な修吾の瞳に吸い込まれそうで、私はまた膝頭の辺りを見つめた。 嫌なんじゃなくて、怖かったのだ。この先に続くであろう言葉が、怖い。 「俺が年下だって理由だけで逃げんなよ。俺は、本気だ」 ドクン、と心臓が高鳴った。顔も熱くなってきた。勿論、修吾を見ることさえ、できない。 |